2019年2月17日日曜日

Wikiaとフェア・ユースについて

はじめに


いまさら、という感じがする話題ですが、英Wikia(ふくむプラットフォームとしてのWikia/Fandom全般)について誤解されているであろう部分について触れておきます。英Wikiaの問題として、いわゆる「ぶっこ抜き」と「画像等の転載」があると考えている方は多いと思います(私もそうでした)。くだんのDMCA*1の申告でもこれらの問題は並列して扱われていました。
https://terms.dmm.com/onlinegame_service/, の第7条に記載されている利用規約に基づき、このコミュニティは当社のゲームサーバーからゲームデータを抽出することを許可されるべきではありません。
https://kancolle.fandom.com/wiki/Thread:705493#29
ただし、これらは別の次元の話ですので、区別して考える必要があります。

(*1 第一には艦これ公式Twitterアカウントによるアナウンス、およびそれをもとに
Fandom運営が無効と判断したことをもって偽と判断しています。ただ、そもそもLumen Databaseで閲覧できるDMCA申請そのものに不審な点が見られるため、第三者によるなりすましが疑われていました。)


画像などの転載


「画像等の転載」については、日本の著作権法を踏まえると、英Wikiaは組織的に著作権侵害を行っているように「見えます」。しかし、英Wikia(というよりWikia/Fandom全般)をホストしているFandomはアメリカにサーバーがありますから、アメリカの著作権法が適用されます。そしてアメリカではフェア・ユースという概念がありますので、日本と比べると著作物を許諾なく自由に利用できる範囲が広くなっています。
Fandomではフェア・ユースが適用されうる範囲で著作物を利用するという方針ですので、英Wikiaでの画像利用がフェア・ユースと言えるのかどうか見ていきましょう。

(以下小見出しの部分はhttps://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%82%A2%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%82%B9より引用)


利用の目的と性格(利用が営利性を有するか、非営利の教育目的かという点も含む)


この点に関しては、ユーザー側は利益を得ていないので非営利と言えますが、Wikia運営側は広告収入を得ているので営利になるかもしれません。ただ、これに関しては運営側の問題とも言えます(フェア・ユースを盾にした著作物の利用で不当に利益を得ていないか)。


著作権のある著作物の性質


艦これの画像の場合、あくまでゲームの一部を構成する著作物であること、またゲームの目的は画像そのものを入手・閲覧することではなく、ゲーム内でキャラクターを入手し、育成することが目的だと考えられますから、映画や小説などの単体の著作物とは異なるのではないか、よりフェア・ユースが認められやすいのではないかと考えられます。


著作物全体との関係における利用された部分の量及び重要性


この点に関しては、ゲーム内の素材のほぼすべてを掲載しているので、ゲームの攻略に必要な範囲を大幅に超えていると思われます。ただしファンコミュニティの形成・交流の促進という点を考えると、キャラクターに対する理解を深めるために画像・セリフデータ等は有用だと考えられます。
また、艦これはコンテンツ全体としては公式による派生著作物(アニメ・コミック等)の他にもゲーム外でのコラボ・イベント等で収益を得ているため、ゲーム内で所持しておらず馴染みのないキャラクターについても、より親しめるように情報を提供していると考えることもできます。


著作物の潜在的利用又は価値に対する利用の及ぼす影響


有益な攻略サイトはゲームの人気に強く関係するので、攻略サイトが存在することのメリットと、攻略サイトによって著作物が使用されるデメリットを天秤に掛けることになると思います。
ゲームとしての艦これは基本プレイは無料、アイテム課金制ですから、基本的には無料で取得できるゲーム内画像を使用することで運営に損失を与えるとは考えにくいです。音声データについても同じことが言えるでしょう。BGMについては、サウンドトラックに収録されているのはゲーム内で配信されていたものとは別バージョンですので、完全に販売を阻害しているとは言えないかもしれません。
公式がゲーム内のデータをそのままの形で販売している場合は事情が別ですが、艦これの場合はそうではありませんよね。


で、結局どうなの?


ここで示したのはあくまでも「Fandomおよび英Wikiaの考えとしてはこのようなものであろう」という私の推測ですので、彼らはもっと緻密な論理を用意しているかもしれません。(ちなみに私自身が完全に納得しているという訳でもありません。)また、権利者側はフェア・ユースを認めずに今後改めてDMCA申請をするかもしれません。
ただ、個々のユーザーの考えは別として、Fandomおよび英Wikiaはファンサイトとして著作権侵害を意図的に行っている、という見方はおそらく当て嵌まらないだろうと思います。


ファンアートについて


ファンアート(二次創作物)の無断使用に関しては、無断での使用をやめたほうがよいと、Tsubakura氏他と以前お話したことがあります。とりあえずその場では、使用許可の必要ないものを使う、もしくは使用許可を得た上で使うという話の流れになりました。
艦これの二次創作物に関しては、艦これ運営が使用許諾が必要ないケースを示していますので、その範囲内では二次創作物でも著作権を主張することができるのではないかと私は考えています。ですので、極端な話、無断使用に関しては、DMCA申請を出してFandom運営側に削除してもらうという手段も取れるのではないかと思います。やってみないとわかりませんが…

結びにかえて


著作権に関しては、色々思う所がある人もいらっしゃるでしょうが、文化の違いだけではなく国による枠組みの違いも存在しますから、それぞれのコミュニティのローカルルールに従っている相手を直接非難することはきわめて非生産的ですので、やめた方がよいと私は思います。
艦これクラスタではあまり知られていないのかもしれませんが、外国では著作権が存続しているが日本では著作権が切れている、という作品も存在します。そして外国の権利者にはそれを快く思わない方もいます(金銭的な収入が失われるので当然と言えば当然です)。それでも、日本人を直接非難するというような例は、少なくとも私は聞いた事はありません。異なるルールの枠内で動いている相手を、一方的に非難するのは無意味だからです。
言葉の壁やその他の問題で、非日本語話者との接触を忌避する方がいるのは承知しています。しかし、そうではない場合、彼らとコミュニケーションすることで得られるものは少なくないと私は考えています。違ったものの考え方や見方に触れることで、創作活動をしている方は創作活動への刺激を得られるかもしれません。また、例えば現在海外の方と実世界でコミュニケーションする機会がない方でも、一般的な日本人とは違う考え方にあらかじめ触れておくことで、将来生じる(かもしれない)海外の方との交渉を円滑に進めることができるかもしれません。



0 件のコメント:

コメントを投稿

追記

ラムダ氏と観察部氏の件については、あくまで傍観者の観点ですが、論理的に筋が通ってなくても相手が悪い(と思う)から構わず批判する、というのは過日の検証共同関連の方々を思い起こさせる部分があったので記事を書きました。軽く眺めた限りでは、苦言を呈している人もいないようなので、これはさす...